本格的な串焼店にとって、炭は味を左右する、まさに生命線ともいえるもの。普段我々がバーベキューで使うような安価な炭とはやっぱり違うものを使っているはず。はたしてどんなこだわりがそこにあるのだろうか? 人気の串焼き店で、使っている炭の話を聞いてみた。

備長炭

京王線聖蹟桜ヶ丘駅からすぐの場所にある『串焼き 武ん家』。地元の方を中心に人気のこちらの店で使用している炭は、誰しもが聞いたことのある「備長炭」。実は偽物がとても多く、海外産でも「備長炭」を騙っている事例が多いそうだ。

ウバメガシという木からつくられる本物の備長炭はとても硬く、叩くと「キィーン」というとても澄んだ音がする。その音の良さから「炭琴」という楽器もあるとか。

さて、なぜ備長炭なのかというと火力と持ちの良さが他の炭とは一線を画するものだから。とても高価で貴重な備長炭だが、素材の味を引き出すには備長炭の高火力が一番。味に妥協しないこだわりがここに垣間見える。

そんな備長炭もただ火をおこして置けばいいというわけではない。熱せられた炭はいきなり爆発して「ハネ」ることがあるからだ。バーベキューをしていていきなり炭が弾ける、誰しも経験のあるあの現象が「ハネ」。これが備長炭でもしばしば起こるのだ。

「ハネ」た熱い炭が体に当たれば火傷の危険も大きい。炭の台とカウンターの間に仕切りをしているので、お客さんは安心とはいっても、なるべくならそういう状況は避けたいところ。そこで、「ハネ」そうな炭は事前にじっくりと30分以上コンロで熱してから使うことで「ハネ」の危険を防げるのだそうだ。

それ自体もさすがの知恵だが、その「危なそうな」炭を見極めるということがまさに熟練の技。実際に危なそうな炭をみせてもらっても、筆者にはまったく違いがわからなかった。毎日炭にふれ、向き合っているからこそできるプロの「目利き」といえる。

さらには炭の配置によって空洞が大きすぎると「ハネ」の可能性が上がり、逆に空洞が無さすぎると今度は火力に問題が生じる。その加減をするために営業中もこまめに炭の配置を調整しなければならない。気を抜く時間は無いのだ。

きっとこれらは長い経験で店主の武子一仁さんが身につけた技術のほんの一つなのだろう。技術と素材などの様々な要素がすべて交わってはじめて美味しい串になるのだなあと、なんだか頭が下がる思いがした。

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火起こしに始まり、火加減、炭の配置など様々な気配りをしつつ素材を活かせる絶妙の焼き加減を見極め、さらにはカウンターのお客さんとの軽妙なトークまで同時進行でこなす。備長炭を見事に操る匠の技はまさに素晴らしいの一言。

取材協力店舗

武ん家
『串焼き 武ん家』

月~金17:00~23:00、土日祝17:00~24:00 月曜休

東京都多摩市関戸2-39-17コートビレッジ102
042-376-2272

京王線聖蹟桜ヶ丘駅東口から徒歩5分